2005年10月17日
第13回 証憑書類の保存義務
確定申告も無事に終わり、申告に使用した決算書や帳簿類は当然保管するとして、会計ソフトの入力や手書き記帳に使った領収書や請求書...みなさんは、どうされていますか?まさか、捨ててしまう人はいないと思いますが、これらも7年間の保存義務があることはご存知でしょうか。
私はモノを捨てられない性質なので、保存義務があってもなくても保存していたと思いますが、7年の保存義務ということは、もしかしたら知らずにいたかもしれない...そのくらい、あまり話題にならないことのような気がします。
ちなみに、これら事実を証明する根拠となる書類のことを証憑(しょうひょう)書類といいます。
今回は、会計ソフトとはあまり関係ありませんが、この証憑書類の保存についてお話したいと思います。
2005年08月25日
番外編 経理入門 まとめ
これまで、5回に渡り経理入門ということで複式簿記の原理について簡単に説明してきましたが、ここで、全体の流れをまとめておきたいと思います。
詳細につきましては、過去の記事を参照して下さい。
(1)1月1日(期首)の資産残高と負債残高は同じです。 |
(2)借方と貸方の金額が同じになるように、お金の動きを記録していきます。 このお金の動きの記録を仕訳といい、基本的にお金は貸方から借方へ移動します。 |
(3)仕訳を積み重ねると、常に借方合計と貸方合計は同じになります。 |
(4)仕訳を機械的に分類することにより、元帳が作成されます。 |
(5)元帳から、各残高(合計)を知ることができます。 |
(6)各残高(合計)をひとつにまとめると決算書が作成され、利益を知ることができます。 資産残高と負債残高をまとめたものが、貸借対照表、費用合計と収益合計をまとめたものが、損益計算書です。 |
2005年08月22日
第5回 経理入門 決算書
前回は、お金の動きの記録=仕訳を積み重ねて、機械的に分類すると元帳が作成され、残高(合計)が計算されるということをお話しました。
この残高(合計)を集計すると決算書が作成され、複式簿記の最終目的である利益を知ることができます。
前回の例では、資産、負債、費用、収益、それぞれの残高(合計)は次のようになりました。
これらの残高(合計)を一つにまとめてみましょう。
このブログの第1回 経理入門でご紹介した図と同じになったことにお気付きでしょうか。
そして、ここでも借方の合計と貸方の合計が同じになることに注目して下さい。
マジックのような不思議な気持ちになりますが、よく考えれば不思議でもなんでもなく当然の結果であることがわかります。
借方と貸方が同じ金額になるように作成した仕訳を積み重ねて、残高を求める時には、借方と貸方から同じ金額を引いているのですから、その結果は当然、借方の合計と貸方の合計が同じになるわけです。
しかし、このままでは、肝心の利益がわかりにくいので、費用と収益を利益分だけずらしてみます。
いかがですか?
収益-費用=利益となり、同時に資産-負債=利益となる様子がご理解いただけると思います。
実は、資産-負債=利益を表す(A)の部分と、収益-費用=利益を表す(B)の部分が、決算書そのものなのです。
(A)の部分を貸借対照表、(B)の部分を損益計算書と言います。
そして、(A)の貸借対照表は、1月1日(期首)に資産と負債の残高がありますから、これも一緒に記載することになっています。
また、(B)の損益計算書は、借方、貸方ではなく、収益、費用、利益の順に記載します。
この2種類の決算書によって、利益以外にもいろいろな情報を知ることができるのですが、これは専門家の解説に譲るとして、とにかく、この貸借対照表と損益計算書ができれば、青色申告ができます。
そして、「IJssel会計」は、これらの決算書を作成するためのソフトということになります。
さて、ここまで5回に渡り、経理入門ということで複式簿記の原理について簡単に説明してきました。
漠然とでもご理解いただけたでしょうか?
しかし、複式簿記の原理は理解できても、やはり経理は難しいのです。それは何故なのでしょう?
また、世の中にはそれこそたくさんの会計ソフトが存在します。でも、そのソフトを使いこなせずに挫折したという方も多いようです。挫折の原因はどこにあるのでしょうか。
次回からは、
・複式簿記の原理は簡単なのに経理が難しいのはなぜ?
・会計ソフトを使いこなせない理由は?
・難しい経理を簡単にするための「IJssel会計」の設計思想とは?
というお話に移っていきたいと思います。
2005年08月15日
第4回 経理入門 元帳
前回は、お金の動きの記録=仕訳の基本について説明しました。
では、この仕訳が積み重なるとどうなっていくのでしょうか。
簡単な例をあげて考えてみましょう。
1月1日(期首)に現金が10万円ありました。
銀行から、現金20万円を借り、手持ちの現金は30万円になりました。
商品を15万円で仕入れ、25万円で売りました。
銀行に10万円返しました。
これらの取引の仕訳(お金の動きの記録)は次のようになります。
この仕訳(お金の動きの記録)を積み重ねたのが次の図です。
ここで、資産に注目してみましょう。これにより資産の動きがわかります。
このようにまとめた帳簿を元帳と言います。
実際には、仕訳に記載されている、日付、天秤の反対側(相手科目)、摘要も記載されます。つまり、元帳は仕訳の抜粋と言い換えることもできます。
資産の元帳の代表的なものに、よくご存知の現金出納帳や銀行口座の通帳などがあります。
さらに、この元帳の借方と貸方をそれぞれ合計し、借方から貸方を引くと残高を知ることができます。
なぜ、借方から貸方を引くかと言えば、資産は借方に配置されているので、借方に残高が出るようにするためです。
この例では、最初に10万円持っていて、20万円借りて30万円となり、15万円で仕入をして15万円残り、25万円で売って40万円となり、10万円返して最終的に手元の現金は30万円となりました。
図の残高の30万円と一致してますね。
同様に、負債、費用、収益の元帳と残高(合計)も図にしてみました(下図)。
ここで、費用と収益の借方と貸方の差が残高ではなく合計となっているのは、費用と収益は期首にリセットされ、残高という概念がないためです。
この図を見ていただいてもわかるように、通常の取引では費用は借方と決まっているため、借方と貸方の差を計算するまでもなく、借方の合計が、そのまま合計となります。そこで、貸方欄を省略して、仕入帳や経費帳として帳簿を作成することも多いです。
同様に、収益では、借方欄を省略して、売上帳を作成します。
簿記は、帳簿の種類が多くて難しいと感じる方もいらっしゃると思いますが、以上のことからわかるように、売上帳も仕入帳も経費帳も、全て元帳のアレンジバージョンなのです。ここでは触れませんが売掛帳や買掛帳もそうです。
さて、仕訳を積み重ねて、機械的に分類すると元帳が作成され、残高(合計)が計算されるということがわかりました。
この残高(合計)を集計したものが決算書となっていくわけですが、これについては次回としたいと思います。
2005年08月08日
第3回 経理入門 仕訳
前回、借方と貸方は、天秤ばかりの左と右であり、天秤が吊り合うように(借方と貸方の金額が同じになるように)お金の動きを記録して積み重ねていくと、常に天秤は吊り合っている(借方と貸方が同じ)...これが複式簿記であるということを説明しました。
このお金の動きの記録のことを仕訳と呼ぶわけですが、今回は、この仕訳について説明したいと思います。
動いたお金を吊り合うように天秤に乗せてみると、下の図のようなイメージになります。
でも、これでは、どこからどこへ動いたのかわかりませんね。
実は、このお金は右(貸方)から左(借方)へ動きます。
代表的な3つのケースを図にしてみました。
まず、上の図の(a)お金を借りた場合を考えてみましょう。
例として、銀行から現金100万円を借りたとします。
この時、お金は貸方から借方へ動くので、負債から資産に動くことになります。
実際に、銀行のお金が100万円減って、自分のお金が100万円増えました。
ところが、自分を中心に考えれば、借金(=負債)は増えたと考える方が自然です。
そこで、前回の最後に書きましたように、資産と費用が左側(借方)、負債と収益が右側(貸方)に配置されていることが重要になってきます(右図)。
複式簿記では負債はマイナスの資産という意味で貸方に配置し、マイナスのマイナスでプラスにするという工夫がされているのです。
つまり、このケースでは、借方に配置されている資産が天秤の左(借方)にあるので、資産は増え、貸方に配置されている負債が天秤の右(貸方)にあるので、負債も増えるということになります。
本来、天秤の右(貸方)にある場合は右から左へ動くので減るべきところを、負債は貸方に配置されていて立場が反転するので、逆に増えると考えるわけですね。
では、(b)売上があった場合はどうでしょうか。
この時、お金は貸方から借方へ動くので、収益から資産に動くことになります。
実際に、お客さんのお金が減って、自分のお金が増えました。
そして、借方に配置されている資産が天秤の左(借方)にあるので、資産は増え、貸方に配置されている収益が天秤の右(貸方)にあるので、収益も増えます。
(c)経費を使った場合も見てみましょう。
例として、文房具店で事務用品を現金で買ったとします。
この時、お金は貸方から借方へ動くので、資産から費用に動くことになります。
実際に、自分のお金が減って、文房具店のお金が増えました。これは、現金(=資産)が事務用品(=費用)に化けたと考えてもらってもかまいません。
そして、借方に配置されている費用が天秤の左(借方)にあるので、費用は増え、同じく借方に配置されている資産が天秤の右(貸方)にあるので、資産は減ります。
どうですか?仕訳の規則が見えてきたでしょうか?
仕訳の規則...それは仕訳の借方・貸方と配置の借方・貸方が同じだったら増え、違ったら減るということです。
今はまだ、ピンとこないかもしれませんね。
ここでは、とりあえず右の資産、負債、費用、収益の配置図を覚えておくと、今後何かと役に立ちます。
さて、複式簿記では、この仕訳(お金の動きの記録)を積み重ねていく訳ですが、仕訳が積み重なるとどうなっていくのでしょうか。
この続きは次回としたいと思います。
2005年08月01日
第2回 経理入門 借方と貸方
前回、複式簿記の大事な7つの用語のうち5つについて説明しましたので、今回は、残りのわかりにくい2つ、借方と貸方について説明したいと思います。
まず最初に、天秤ばかりを想像して下さい。
この天秤の左の皿が借方であり、右の皿が貸方です。
複式簿記というのは、この天秤が吊り合うようにお金の動きを記録していくと、利益のみならず、多様な財務情報を知ることができる仕組みなのです。
ちなみに、このお金の動きの記録のことを仕訳といいます。
では、なぜ、天秤の左右の皿を借方、貸方と呼ぶのでしょうか?わかりにくいですよね。
私が受講した講習会の講師は、
「意味も理由もありません。そのまま覚えてください」
と言いました。
英語では、借方をデビット[Debit]、貸方をクレジット[Credit]と言います。
通常、クレジットと言えばクレジットカードで、これはお金を借りるのに、なぜ「貸」???
私も最初はよく混乱しました。
この辺がこの用語をわかりにくくしている原因でしょう。
[Credit]を辞書で引いてみますと、「信用貸し」と出ています。
最初に、複式簿記が日本に来た時に和訳をした人が、天秤の右の方が[Credit]と表現されているのを見て、訳すのに「信用貸し」→「貸す方」→「貸方」としたのかもしれません。
そして、反対の左の方は、「貸す」の反対で「借りる方」→「借方」です。
以上は余談ですが、大事なのは、天秤が吊り合うということで、便宜上、天秤の左を借方、天秤の右を貸方と呼ぶことにしたと考えてください。
ここで、前回の図を思い出してみましょう。
まず、どの図も、左側(借方)と右側(貸方)の高さが同じということに注目して下さい。
簡単に言うと、1月1日(期首)の天秤が吊り合っている状態(借方と貸方が同じ)から、天秤が吊り合うように(借方と貸方の金額が同じになるように)お金の動きを記録して積み重ねていくと、12月31日(期末)の天秤も吊り合う(借方と貸方が同じ)ということです。
もちろん、12月31日(期末)に限らず、いつの時点においても天秤は吊り合っているはずです。
これが、複式簿記の原理です。
複式簿記の複式とは、お金が動いた時に、天秤の左(借方)と右(貸方)、2箇所(複)に同じ金額を記録していくという意味なのです。
ここで、試しに複式簿記を英語でなんと言うのか調べてみました。double-entry bookkeepingです。ダブルで入力する簿記...そのままですね。
さらに、資産と費用が左側、負債と収益が右側にあるのは、ちゃんと意味があります。
そうです。資産と費用は借方で、負債と収益は貸方ということです。
でも、この場合の、借方と貸方は、天秤の左と右とはちょっと意味が違います。
そして、ここが複式簿記の絶妙な部分であり、「IJssel会計」の設計に大きく影響を与えたところでもあります。
これについては、次回としたいと思います。
2005年07月25日
第1回 経理入門
プログラマとしてまだまだ駆け出しだった20代。
ソフトハウスに勤めていた私は、何を間違えたか経理ソフトを担当することになり、「経理入門」という3日間の講習会に参加するよう上司に言われました。
それまで、会計や簿記を学ぶ機会のなかった私には、この講習会は新鮮でした。
会計を学ぼうとすると、避けて通れないのが「会計用語」です。
この用語で拒否反応を起こす人も多いのではないでしょうか。
まずは、複式簿記に関する7つの言葉を覚えてください。
複式簿記というのは、青色申告特別控除65万円の適用を受けるために必要な帳簿のつけ方です。
この7つの用語はさらに、最も重要な1つと、わかりやすい4つと、わかりにくい2つに分けられます。
●最も重要な用語
(1)利益[りえき]
●わかりやすい4つの用語
(2)資産[しさん]
(3)負債[ふさい]
(4)費用[ひよう]
(5)収益[しゅうえき]
●わかりにくい2つの用語
(6)借方[かりかた]
(7)貸方[かしかた]
では、これらの用語について、簡単に説明します。
●最も重要な用語...利益
1年間の「儲け」のことです。
複式簿記は、この利益を知るためにつけるのです。
青色申告では、「青色申告特別控除前の所得金額」と言います。
「IJssel会計」は、この利益を知るために複式簿記で帳簿をつけるためのソフトです。
●わかりやすい4つの用語
本当はここに、資本[しほん]が加わり5つなんですが、個人には関係ないので4つで大丈夫です。
これらはさらに2つに分けられます。
(A)資産、負債
(B)費用、収益
(A)は、財産のことです。「資産」はプラスの財産、「負債」はマイナスの財産です。
借金はないよという場合でも、資産と同額を「事業主」つまり、あなた個人に借金していると考えます。
(B)は、1年間のお金の出入りです。「収益」は稼いだお金であり、「費用」は使ったお金です。
個人の青色申告では、1月1日~12月31日を1年(決算期)として決算を行います。
1月1日(期首)は、必ず「資産=負債」です。
また、費用も収益も0です。
1月1日にこの状態でスタートして、1年の間に収益を上げ、費用をかけ、12月31日(期末)には、収益-費用=利益となります。
同時に、資産-負債=利益となり、この利益の分、1年間で資産が増えたということになります。
赤字の時はどうかって?
利益がマイナスなので、資産は減りますね。ちなみにマイナスの利益を「損失」と言います。
ここまでは、直感的にご理解いただけると思います。
さて、次にわかりにくい2つの用語、借方と貸方ですが、何を隠そう、これが複式簿記のミソなのです。
講習会初日、この説明を聞いた私は感動すら覚えました。
これについては次回としたいと思います。