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2005年09月26日

第10回 MS-Accessな訳

MS-Accessというのは、Microsoft(マイクロソフト)社のデータベース管理ソフトで、Microsoft Office製品の一つです。

「IJssel会計」は、MS-Accessで開発されていますので、ご利用いただくためには、今のところ、このMS-Accessが必要なわけですが、このことは、ユーザの立場からすれば、重要な問題です。
なぜなら、パソコンを購入すると、通常、Microsoft Office Personal Edition(マイクロソフト オフィス パーソナル エディション)がインストールされていて、Excel(エクセル)Word(ワード)は使えますが、Access(アクセス)はないので別に購入しなければならないからです。

にもかかわらず、「IJssel会計」の開発に、なぜMS-Accessを採用したのか...今回は、このことについてお話したいと思います。

私が「IJssel会計」の開発に着手したのは、2000年の始めのことでした。
わずか5年前のことですが、当時はまだまだパソコン発展途上で、インターネット人口も今ほど多くなく、ISDN接続で速いと喜んでいた頃です。
私のマシン環境も、Windows95、MS Office97、Visual Basic(ビジュアルベーシック)5.0という感じでした。

ソフト開発というのは、ユーザから見ればどの言語で開発されていようと関係ないことではありますが、開発する側から見れば、どの言語、どのツールを使用するかというのは大きな問題です。

私の場合、プログラマとしての言語経験から、Visual Basic(VB) か MS-Access(VBA) かの選択となったわけですが、結局、MS-Accessで開発することにしました。

その理由はいくつかあります。

(1)開発の手間の問題

会計ソフトは決して小さいシステムではありません。
Visual Basicを使用すれば、特別なソフトを必要としない普通のアプリケーションソフトとして開発することは可能です。
しかし、データベースの利用一つとっても、Visual Basicでは、データの読み書きをひとつひとつ手作りしなければならず、一人で開発するには、あまりにも手間がかかりすぎるという事情がありました。

そういう意味では、MS-Accessは元々データベース管理ソフトですから、開発するのにとても手軽なツールだったのです。

それで、時間をかけていつ完成するともわからない作業にとりかかるよりも、まずはちゃんと使えるソフトを早期に開発する方が先決だと判断したわけです。

(2)インターネットで公開するための問題

「IJssel会計」はインターネットで公開することを前提としていましたので、当時の通信環境では、配布するファイルのサイズをできるだけ抑える必要がありました。

Visual Basic で開発すると、インストーラを含む配布ファイルは、それなりの大きさになることが予想され、MS-Accessで開発した方がファイルサイズはより小さくて済みます。

今でこそ、ブロードバンドが普及してきていますが、当時は、ファイルサイズは重要なポイントだったのです。

(3)不特定多数のユーザに配布する問題

「IJssel会計」は、パッケージソフトとして不特定多数のユーザにそのまま使ってもらうことを前提としています。
不特定多数ということは、インストールするパソコンの環境は多様ということです。
パーソナルコンピュータというくらいですから、OS(Windows)も違えば、すでにインストールされているソフトも違います。

Visual Basicで開発されたソフトの構成は複雑で、インストールするパソコンの環境によっては、動かない場合があるだけでなく、それまで動いていた他のソフトも動かなくなる可能性があるのです。
ちなみに、これをDLL Hell(地獄)問題と言います。
インターネットに公開する場合、個々にインストールのサポートをすることはできませんから、これは大きな問題でした。

それに対し、MS-Accessで開発したソフトは、MS-Accessが稼動しているパソコンでしたら、まずは安全に使用することができます。
配布するファイルは、mdeファイル1本ですから、他へ影響を与えることもありません。

(4)バージョンアップの問題

パソコンの世界は日進月歩で変化しています。
Microsoft(マイクロソフト)社は、次々と新しいバージョンのOS(Windows)を出し、開発ツールを出し、MS Office製品を出します。
基本的に、OSや開発ツールのバージョンアップでは、古いバージョンで動くものは新しいバージョンでも動くことが多いのですが、Microsoft(マイクロソフト)社の場合、それが保証されないことがあります。

ですので、せっかく作ったソフトも、MS製品のバージョンアップにより動かなくなる可能性があり、その対策のためには、自分で各バージョンの環境を整備して動作確認をしなくてはいけません。

Visual Basicで開発した場合には、これがOS(Windows)に依存し、MS-Accessで開発した場合は、MS Office製品のバージョンに依存します。
そして、MS Office製品は、Microsoft(マイクロソフト)社が、各OS(Windows)での動作を保証してくれますから、開発者の立場からすれば、MS-Accessで開発した方がより安全ということになります。

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以上が、「IJssel会計」の開発にMS-Accessを選んだ主な理由ですが、最初にも書きましたように、ユーザにMS-Accessが必要というデメリットがあることに変わりありません。

実を言いますと、MS-AccessがなくてもMS-Accessで開発されたソフトを使う方法はあります。
それは、ランタイム版と呼ばれるものです。

当然、私もランタイム版の配布を考えました。
ところが、実際にランタイム版の配布ファイルを作ってみると、170MBにもなってしまいました。圧縮しても100MB以上あります。これでは、インターネットに公開できません。
百歩譲って、CDに焼いて配布できたとしても、今度はDLL Hellの問題が発生して、確実にインストールできる保証がないこともわかりました。

それで、ランタイム版の配布は断念したわけですが、もし、他のソフトをインストールしたことにより、MS-Accessのランタイムがインストールされているようでしたら、「IJssel会計」も動作するかもしれません。
心当たりのある方は、是非、お試しを...。

しかし、私もできるだけ多くの人に「IJssel会計」を使っていただくためにも、MS-Accessを購入しなくても使えるようにしたいと思っているのです。

先にも書きましたように、パソコンの世界は日進月歩で変化しています。
Microsoft(マイクロソフト)社による最新テクノロジーでは、DLL Hellの問題は解消されているとも聞きます。
また、ブロードバンドの普及により、100MBを超えるファイルのダウンロードも可能となりました。
そこで、Access2003バージョンでは安全にインストールできるランタイム版の作成が可能らしいということで、現在、調査中です。

「IJssel会計」は今のところAccess97Access2000の2種類のバージョンを公開中ですが、近い将来、是非、ランタイム版公開を実現させたいと考えているところであります。

投稿者 IJssel : 10:00 | コメント (5)

2005年09月19日

第9回 SOHO向けということ

前回は、「IJssel会計」が他の会計ソフトとは決定的に違う設計思想についてお話しました。
今回は、「IJssel会計」のもう一つの大きな特徴であるSOHO向けということについてお話したいと思います。

ところで、今さらという感じではありますが、SOHOとはスモールオフィス/ホームオフィス[Small Office/Home Office]の略で、独立した小規模事業者及び個人事業者、在宅、副業型ワーカーのことです。
つまり、経理も含めなんでも一人でやってる事業主ということが言えます。

そんなSOHOのための会計ソフトとはどんなものなのでしょうか。

なんでも一人でやっているということは、他者によるチェックが入らないということでもあります。
几帳面な性格の人ばかりではありませんから、本業に忙しく、お金の管理がルーズになっていても、どこからもチェックが入りません。
強いて言えば、年に1度の確定申告が唯一のチェックということかもしれませんね。
それで、毎年大慌てで領収書の山と格闘することになるわけです。

ところで、SOHOの会計一般企業の会計の違いということですが、私は大きく2点あると思います。

(1)SOHOは公私混同

別に公私混同するつもりはなくても、事業用のお金とプライベートなお金をきっちり分けて管理できる人は、かなり几帳面な人だと思います。
このような人は、あえてSOHO向け会計ソフトにこだわることはないかもしれません。

しかし、事業用の銀行口座を別にしているわけでもなく、クレジットカードを事業用とプライベートに分けているわけでもなく、財布は一つで、そこから夕飯の買い物もすれば、仕事に必要な本も買う。
そもそも、税法のことも詳しくないから、買い物の時に事業用の経費にできるのかどうかも判断できない。

そんな人でも使える会計ソフトを...ということで、「IJssel会計」では、事業用もそうじゃないものも全部入力してしまえ!...ということにしました。
仕訳データの一つ一つに事業用かどうかのタグをつけておいて、決算の時には事業用のタグのついたデータだけを集計するという仕組みです。
ちなみに、「IJssel会計」では、このタグのことを【帳簿】と呼んでいます。

この仕組みにより、一つ大きなメリットが生まれました。
それは、通帳の明細やクレジットカードの利用明細の入力です。
事業用の口座やクレジットカードを別にしていなくても、事業用かどうかを判断しながら選んで入力するのではなく、目の前にある明細と全く同じ内容で入力できるのです。
しかも、残高が合っているかどうかのチェックもできるので、入力ミスの防止にもなります。

このおかげで、前回の「第8回 簿記を知らなくても入力できる」と合わせて、勘定科目も気にせず、事業用かどうかに関係なく、明細そのままを入力できるということで、操作性の面で非常に使いやすくなりました。
ちなみに、下の図は預金通帳の明細に事業用のタグをつけたイメージ図で、「IJssel会計」での入力画面はこちらになります。
image_009_1.gif

(2)自宅で仕事をする特権

SOHOの中でも、事務所を借りずに自宅で仕事をしている場合には、家賃、水道光熱費の一部を経費にできるという特権があります。
あえて特権と書きましたが、これらの生活費は仕事をしてようがしていまいがかかるものなので、経費にして節税できるというのは特権と言ってもいいでしょう。

経費にする金額は、決算の時にまとめて計上しても構わないのですが、せっかくなので、発生時に事業用分を分けられる機能を考えました。
【帳簿間振替】という機能です。

例えばガス代を7552円払って2割の1510円を事業用経費とする場合、普通の会計ソフトでしたら、1510円を入力して摘要で7552円のうちの2割であることがわかるようにしておくわけですが、「IJssel会計」では事業用かどうかに関係なく、預金通帳の入力で「ガス代7552円」を入力してしまいますから、別に仕訳を作成する必要があります。
簿記を知らない人がこの作業をするにはちょっと無理があるので自動化したわけです。
設定がちょっとややこしいかもしれないんですが、私は便利に使ってます。
詳しくは、申告まで時間がない!場合の預金通帳入力の下の方をご覧下さい。

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以上が、「IJssel会計」がSOHO向けであるという特徴です。
特に(1)の事業用かどうかに関係なく全部のデータを入力できるということは、「税務申告さえできればいい」という消極的な目的ばかりでなく、プライベートも含めた個人としての総合的な財務管理が可能になります。
私自身は一応主婦ですので、「IJssel会計」を家計簿としても使ってるのですが、預金通帳と主な領収書入力だけで、1年分の夫の収入や生活費の内訳が簡単に把握でき重宝してます。

そして、この設計思想もまた、開発者である私がSOHOであり、あまり几帳面な性格でもないところから生まれたものだという気がします。

さて、次回からはブログタイトルにある「開発裏話」ということで、「IJssel会計」の中身のお話をしていきたいと思います。

投稿者 IJssel : 10:00 | コメント (1)

2005年09月12日

第8回 簿記を知らなくても入力できる

前回は、会計ソフトを選ぶポイントを4つのタイプに分けて考えてみました。
私がフリーランスになり青色申告事業者となって必要となったのは、その中の、「簿記を知らない」「税務申告さえできればいい」というタイプの会計ソフトです。
今回は、この会計ソフトの開発にあたり、簿記を知らなくても使えるようにするにはどうしたらいいかという、「IJssel会計」の設計思想についてお話したいと思います。

設計思想といっても、難しい話ではありません。
その前に、簿記用語がチンプンカンプンという方は、こちら→「番外編 経理入門 まとめ」

さて、複式簿記で帳簿をつける時には、会計ソフトを使っても使わなくても、仕訳を作成しなくてはいけません。
実際に手作業で仕訳をする時には、振替伝票を使います。
他に、出金伝票、入金伝票、仕入伝票、売上伝票等もありますが、これらは頻繁に発生する取引を特化したものなので、基本は振替伝票さえあれば、全ての仕訳ができるということになります。

ちなみに、市販されている振替伝票は下図のようなものです。(この図はコクヨの商品を参考に作成しました)
image_008_1.gif
いきなり、この用紙を前にしても、仕訳ができない人には絶対書けませんよね。

仕訳をするためには、2つの知識が必要です。
一つは、複式簿記の原理を理解していて、二つの勘定科目が借方、貸方のどちらになるかがわかること
もう一つは、その勘定科目が何かを知っていることです。

まず、二つの勘定科目が借方、貸方のどちらになるかということに関しては、出金伝票、入金伝票、売上伝票、仕入伝票等、借方科目又は貸方科目が固定された伝票を使用する方法があります。
例えば、出金伝票では、貸方科目は現金固定ですから、借方科目だけを入力すればいいことになります。
また、入力を元帳形式にするという方法もあります。
元帳では、片方の勘定科目が固定なので、その勘定科目が増えたか減ったかという判断でもう一つの勘定科目を入力することができます。
具体的には、現金出納帳や預金通帳の明細のイメージです。
これらは、多くの会計ソフトが対応してます。「IJssel会計」も例外ではありません。

さらに、会計ソフトによっては、取引例を選ぶことにより借方、貸方を決めるという方法を取っているものもあるようですが、これは、業種に特化していないと、なかなか取引を網羅するのは難しいので、「IJssel会計」ではやってません。

さて、問題は勘定科目が何かということです。

会計ソフトでは、入力された仕訳データは、この振替伝票のイメージで格納されます。
少なくとも、
  (1)日付
  (2)借方科目(勘定科目)
  (3)貸方科目(勘定科目)
  (4)金額(借方金額と貸方金額に分かれる場合もある)
  (5)摘要
の項目が必要です。

ここで、勘定科目の知識がなくても入力できるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
一つは、あらかじめ勘定科目辞書や仕訳辞書のような機能を組み込んでおいて、オペレータがその場で調べながら入力できるようにすることです。
これは、簡単入力を売りにしている有名ソフトに多く採用されているようです。

しかし、事前にソフトに組み込まれたものだけで、全ての入力を行うのは難しいので、ソフトを使い始める前に辞書の設定が必要になってくるでしょう。
また、入力していて、設定されていない取引があった場合には困ってしまいます。
この時には、やはり勘定科目や仕訳の知識が要求されることになりそうです。

そこで、「IJssel会計」では、仕訳データに勘定科目を含まないことにしました。
勘定科目の代わりに、家計簿やお小遣い帳をつける時に自由に決めている項目をそのまま使うことにしたのです。
詳しくは、「IJssel会計」の説明のページをご覧下さい。

これは、言い換えると、仕訳データを入力するための勘定科目の設定も不要、入力の時も勘定科目は不要、つまり、勘定科目の知識は不要ということになります。

いかがですか?
「IJssel会計」が、簿記を知らなくても入力できる理由をご理解いただけたでしょうか。

私が知る限り、この設計思想を採用しているのは、今のところ「IJssel会計」だけです。
これは、私が、簿記の実務をよく知らなかったから生まれた発想かもしれません。
他の会計ソフトは、当然のことながら会計の専門家が開発に関わっていることでしょう。
開発者としては特許を申請したいくらいです(笑)。

しかし、「IJssel会計」も複式簿記のソフトですから、勘定科目の知識が全く不要というわけではありません。
申告直前の決算の時には、仕訳データの入力に使った項目がどの勘定科目に該当するかを関連付けてやる必要があります。
でも、これは一年に1回、決算の時だけでいいのです。わからなければ、この時だけわかる人に相談するという方法もあります。

一般の会計ソフトと「IJssel会計」の違いを図にすると、次のようになります。
image_008_2.gif
しかし、勘定科目の設定を決算の時だけすればよいというのは長所でもありますが、同時に欠点でもあります。
普通の会計ソフトは、先に勘定科目の設定をするので、仕訳データを入力すれば、すぐにその時点の財務諸表を見ることができますが、「IJssel会計」は、その設定を後回しにしているので、すぐには見ることができないのです。
これは、会計ソフトの目的を「税務申告ができればいい」ということにしているので、切り捨てた部分ではあります。

そもそも、私自身、領収書は溜め放題で、普段から入力をして財務諸表をチェックするなんてことはしてません。
申告時期が近づいてきて、慌てて1年分入力しているというのが実情です。
それに、勘定科目で分類した財務諸表は見られませんが、入力に使用した項目での集計はできますので、そのことで困ったことはありません。

さて、次回は「IJssel会計」のもう一つの特徴であるSOHO向けということについてお話したいと思います。

投稿者 IJssel : 10:00 | コメント (4)

2005年09月05日

第7回 会計ソフトの選び方

前回、会計ソフトは開発されやすいということをお話しました。
仕訳データさえ入力してあれば、そこから元帳や決算書を作成するのはコンピュータの得意とするところだからです。(仕訳って?元帳って?という方はこちら
なので、会計ソフトの特徴に、「自動転記」「自動集計」とあっても、それは会計ソフトを使うなら当然のことなので、そのソフトの特徴とは言えません。

会計ソフトの基本構造を図にすると、次のようになります。

image_007_1.gif
では、会計ソフトはどれも同じかというと、そうではありません。
また、一つのいいソフトが誰にとってもいいソフトかと言えば、それも違います。
事業の規模、内容、ソフトの運用方法、オペレータのスキル等、いろいろな要因によって、会計ソフトに求められるものが違ってくるのは当然です。
ですので、会計ソフトを買ったけれど、使いこなせず挫折したという場合は、自分に合わないソフトを選んでしまったということが言えそうですね。

会計ソフトに限らず、コンピュータシステムは、入力と出力で構成されます。
出力とは、そのシステムが果たすべき目的であり、入力はその目的を果たすための手段です。
会計ソフトでは元帳や決算書を出力するのが目的であり、その手段として仕訳データを入力するわけです。

それでは、会計ソフトに求められる出力は、元帳や決算書だけでしょうか。

一般企業の場合、それ以外に日々の経営に役立てるという大きな目的があります。
通常の財務諸表だけでなく、部門別管理や予算実績管理、月別推移や過去データとの比較など、企業により要求される出力は多様です。

それに対し、個人事業者や小さい企業では、経営状態は経営者が直感的に把握しており、帳簿をつけるだけでも精一杯で会計ソフトは税務申告さえできればいいという場合も多いのです。

ですので、「帳簿が面倒、申告さえできればいい」という人が多機能につられて一般企業向けの会計ソフトを選ぶと、使いこなせないということになりかねません。

次に入力ですが、これは手段ですからオペレータがいかに使いやすいかということが重要です。

ここで、考えなくてはいけないのは、オペレータのスキルです。
パソコンの操作に慣れているのか、簿記の知識はどの程度あるのか、それによって使いやすいソフトの条件は変わって来ます。

今は、どの会計ソフトも入力支援機能を充実させて、その特徴に「簡単入力」をうたってますが、問題はその内容です。
操作が簡単なのか、簿記の知識を補う機能により簡単なのか、また、その両方なのかを見極める必要があります。

ちなみに、簿記の知識を補う入力支援機能には大きく2種類あると考えます。
一つは、仕訳の借方、貸方を教えてくれる機能です。
出金伝票、入金伝票、現金出納長、売掛帳や買掛帳形式での入力がこれに該当します。
これは、仕訳ができる人にとっても、あると便利だったりします。
二つ目は、勘定科目を教えてくれる機能です。
例えば、「タクシー代」を選ぶと「旅費交通費」を入力してくれるような機能です。

オペレータに簿記の知識があって、自分で仕訳ができる場合には、これらの入力支援機能は好みの問題かもしれません。
しかし、オペレータが簿記に不慣れで、自分では仕訳ができないような場合には、入力支援機能は不可欠です。
いくら操作が簡単でも、何をどこに入力すべきかがわからなくては入力はできませんから、結局、入力画面を前に悩んだり、間違えた入力をしてしまったりして、使いこなせないということになります。

ここまでの話をまとめると、会計ソフトを選ぶポイントは次のように分類できます。

会計ソフトを選ぶポイント
出力=目的
経営に役立てたい
税務申告できればよい
入力=手段
簿記の知識があり
自分で仕訳ができる
簿記の知識はなく
自分で仕訳ができない

さて、あなたはⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳのどのタイプですか?

タイプⅠの場合は、企業向け会計ソフトがたくさん売られています。価格は高めですが、実績もあります。

タイプⅡの場合は、会計ソフトを選ぶのは難しいかもしれません。
経営者が把握しきれない程の事業を展開しているような企業は、通常、経理を担当する社員を配置しているので、経営に役立つ機能を重視しているソフトでは、オペレータが簿記を知らないということは想定していないからです。
ですので、一般企業向けのソフトを勉強しながら使うか、費用はかかりますが、会計事務所のお世話になるのも一案です。

タイプⅢタイプⅣの場合は、いわゆる青色申告ソフトを選ぶことになるかと思います。

タイプⅢで自分で仕訳ができるという人は、どれを選んでも使いこなせるでしょう。ネット上にもシンプルで価格の安いソフトがいろいろあります。パソコンが得意な人であれば、エクセル等で自分でできてしまうかもしれませんね。

問題はタイプⅣです。
「元帳形式で簡単入力!」という場合でも、勘定科目の入力は必要ですし、勘定科目を教えてくれる入力支援機能がついていても、そのレベルがいろいろです。
できればお試し版を使ってみて、「これならわかるぞ」というものを選びましょう。

私の場合は、会社員時代、タイプⅠの企業向け経理ソフトを担当していたわけですが、フリーランスになって複式簿記の知識があるからタイプⅢになったかというとそうでもありませんでした。
実際に帳簿をつけ始めると、複式簿記は知っていても勘定科目をよく知らないことに気付いたのです。
さらに、SOHOですので「これは、経費にできるの?」という疑問も出ました。
ですので、タイプⅢタイプⅣの中間あたりという感じです。

そこで、自分の使いやすい会計ソフトが欲しいということで、「IJssel会計」の開発をすることにしたのですが、複式簿記の原理は知っていても、簿記の実務経験はなく、勘定科目もよく知らないプログラマが設計するのですから、市販の青色申告ソフトのような入力支援機能を組み込むことはできません。

では、どうしたか?

次回はいよいよ、「IJssel会計」の複式簿記の知識がなくても入力できる設計思想のお話をしたいと思います。

投稿者 IJssel : 10:00 | コメント (4)