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2005年09月05日
第7回 会計ソフトの選び方
前回、会計ソフトは開発されやすいということをお話しました。仕訳データさえ入力してあれば、そこから元帳や決算書を作成するのはコンピュータの得意とするところだからです。(仕訳って?元帳って?という方はこちら)
なので、会計ソフトの特徴に、「自動転記」「自動集計」とあっても、それは会計ソフトを使うなら当然のことなので、そのソフトの特徴とは言えません。
会計ソフトの基本構造を図にすると、次のようになります。
では、会計ソフトはどれも同じかというと、そうではありません。
また、一つのいいソフトが誰にとってもいいソフトかと言えば、それも違います。
事業の規模、内容、ソフトの運用方法、オペレータのスキル等、いろいろな要因によって、会計ソフトに求められるものが違ってくるのは当然です。
ですので、会計ソフトを買ったけれど、使いこなせず挫折したという場合は、自分に合わないソフトを選んでしまったということが言えそうですね。
会計ソフトに限らず、コンピュータシステムは、入力と出力で構成されます。
出力とは、そのシステムが果たすべき目的であり、入力はその目的を果たすための手段です。
会計ソフトでは元帳や決算書を出力するのが目的であり、その手段として仕訳データを入力するわけです。
それでは、会計ソフトに求められる出力は、元帳や決算書だけでしょうか。
一般企業の場合、それ以外に日々の経営に役立てるという大きな目的があります。
通常の財務諸表だけでなく、部門別管理や予算実績管理、月別推移や過去データとの比較など、企業により要求される出力は多様です。
それに対し、個人事業者や小さい企業では、経営状態は経営者が直感的に把握しており、帳簿をつけるだけでも精一杯で会計ソフトは税務申告さえできればいいという場合も多いのです。
ですので、「帳簿が面倒、申告さえできればいい」という人が多機能につられて一般企業向けの会計ソフトを選ぶと、使いこなせないということになりかねません。
次に入力ですが、これは手段ですからオペレータがいかに使いやすいかということが重要です。
ここで、考えなくてはいけないのは、オペレータのスキルです。
パソコンの操作に慣れているのか、簿記の知識はどの程度あるのか、それによって使いやすいソフトの条件は変わって来ます。
今は、どの会計ソフトも入力支援機能を充実させて、その特徴に「簡単入力」をうたってますが、問題はその内容です。
操作が簡単なのか、簿記の知識を補う機能により簡単なのか、また、その両方なのかを見極める必要があります。
ちなみに、簿記の知識を補う入力支援機能には大きく2種類あると考えます。
一つは、仕訳の借方、貸方を教えてくれる機能です。
出金伝票、入金伝票、現金出納長、売掛帳や買掛帳形式での入力がこれに該当します。
これは、仕訳ができる人にとっても、あると便利だったりします。
二つ目は、勘定科目を教えてくれる機能です。
例えば、「タクシー代」を選ぶと「旅費交通費」を入力してくれるような機能です。
オペレータに簿記の知識があって、自分で仕訳ができる場合には、これらの入力支援機能は好みの問題かもしれません。
しかし、オペレータが簿記に不慣れで、自分では仕訳ができないような場合には、入力支援機能は不可欠です。
いくら操作が簡単でも、何をどこに入力すべきかがわからなくては入力はできませんから、結局、入力画面を前に悩んだり、間違えた入力をしてしまったりして、使いこなせないということになります。
ここまでの話をまとめると、会計ソフトを選ぶポイントは次のように分類できます。
会計ソフトを選ぶポイント
|
出力=目的
|
||
経営に役立てたい
|
税務申告できればよい
|
||
入力=手段
|
簿記の知識があり
自分で仕訳ができる |
Ⅰ
|
Ⅲ
|
簿記の知識はなく
自分で仕訳ができない |
Ⅱ
|
Ⅳ
|
さて、あなたはⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳのどのタイプですか?
タイプⅠの場合は、企業向け会計ソフトがたくさん売られています。価格は高めですが、実績もあります。
タイプⅡの場合は、会計ソフトを選ぶのは難しいかもしれません。
経営者が把握しきれない程の事業を展開しているような企業は、通常、経理を担当する社員を配置しているので、経営に役立つ機能を重視しているソフトでは、オペレータが簿記を知らないということは想定していないからです。
ですので、一般企業向けのソフトを勉強しながら使うか、費用はかかりますが、会計事務所のお世話になるのも一案です。
タイプⅢとタイプⅣの場合は、いわゆる青色申告ソフトを選ぶことになるかと思います。
タイプⅢで自分で仕訳ができるという人は、どれを選んでも使いこなせるでしょう。ネット上にもシンプルで価格の安いソフトがいろいろあります。パソコンが得意な人であれば、エクセル等で自分でできてしまうかもしれませんね。
問題はタイプⅣです。
「元帳形式で簡単入力!」という場合でも、勘定科目の入力は必要ですし、勘定科目を教えてくれる入力支援機能がついていても、そのレベルがいろいろです。
できればお試し版を使ってみて、「これならわかるぞ」というものを選びましょう。
私の場合は、会社員時代、タイプⅠの企業向け経理ソフトを担当していたわけですが、フリーランスになって複式簿記の知識があるからタイプⅢになったかというとそうでもありませんでした。
実際に帳簿をつけ始めると、複式簿記は知っていても勘定科目をよく知らないことに気付いたのです。
さらに、SOHOですので「これは、経費にできるの?」という疑問も出ました。
ですので、タイプⅢとタイプⅣの中間あたりという感じです。
そこで、自分の使いやすい会計ソフトが欲しいということで、「IJssel会計」の開発をすることにしたのですが、複式簿記の原理は知っていても、簿記の実務経験はなく、勘定科目もよく知らないプログラマが設計するのですから、市販の青色申告ソフトのような入力支援機能を組み込むことはできません。
では、どうしたか?
次回はいよいよ、「IJssel会計」の複式簿記の知識がなくても入力できる設計思想のお話をしたいと思います。
投稿者 IJssel : 2005年09月05日 10:00
コメント
Anonymousさん。コメントありがとうございます。
通常、「会計ソフト」と言えば複式簿記に対応しており、65万円控除を受けられます。
もし、Accessをお持ちでしたら「IJssel会計」もお試しいただけると嬉しいです。
投稿者 IJssel : 2007年01月17日 15:55
農業をしています。日々の仕分けを入力するだけで、青色申告
控除65万を受けるために必要な損益計算書と貸借対照表を作成してくれるようなソフトがほしいのですが、アドバイスをお願いします。
投稿者 Anonymous : 2007年01月17日 13:49
上の表を見たとき、目からうろこでした。多くのソフトには、この視点が欠落してる。そして会計事務所を紹介しようとしている!
投稿者 Mie : 2006年06月04日 20:05
判り安いので続きを読みたい。
投稿者 菊池英雄 : 2006年01月08日 21:39