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2005年09月12日

第8回 簿記を知らなくても入力できる

前回は、会計ソフトを選ぶポイントを4つのタイプに分けて考えてみました。
私がフリーランスになり青色申告事業者となって必要となったのは、その中の、「簿記を知らない」「税務申告さえできればいい」というタイプの会計ソフトです。
今回は、この会計ソフトの開発にあたり、簿記を知らなくても使えるようにするにはどうしたらいいかという、「IJssel会計」の設計思想についてお話したいと思います。

設計思想といっても、難しい話ではありません。
その前に、簿記用語がチンプンカンプンという方は、こちら→「番外編 経理入門 まとめ」

さて、複式簿記で帳簿をつける時には、会計ソフトを使っても使わなくても、仕訳を作成しなくてはいけません。
実際に手作業で仕訳をする時には、振替伝票を使います。
他に、出金伝票、入金伝票、仕入伝票、売上伝票等もありますが、これらは頻繁に発生する取引を特化したものなので、基本は振替伝票さえあれば、全ての仕訳ができるということになります。

ちなみに、市販されている振替伝票は下図のようなものです。(この図はコクヨの商品を参考に作成しました)
image_008_1.gif
いきなり、この用紙を前にしても、仕訳ができない人には絶対書けませんよね。

仕訳をするためには、2つの知識が必要です。
一つは、複式簿記の原理を理解していて、二つの勘定科目が借方、貸方のどちらになるかがわかること
もう一つは、その勘定科目が何かを知っていることです。

まず、二つの勘定科目が借方、貸方のどちらになるかということに関しては、出金伝票、入金伝票、売上伝票、仕入伝票等、借方科目又は貸方科目が固定された伝票を使用する方法があります。
例えば、出金伝票では、貸方科目は現金固定ですから、借方科目だけを入力すればいいことになります。
また、入力を元帳形式にするという方法もあります。
元帳では、片方の勘定科目が固定なので、その勘定科目が増えたか減ったかという判断でもう一つの勘定科目を入力することができます。
具体的には、現金出納帳や預金通帳の明細のイメージです。
これらは、多くの会計ソフトが対応してます。「IJssel会計」も例外ではありません。

さらに、会計ソフトによっては、取引例を選ぶことにより借方、貸方を決めるという方法を取っているものもあるようですが、これは、業種に特化していないと、なかなか取引を網羅するのは難しいので、「IJssel会計」ではやってません。

さて、問題は勘定科目が何かということです。

会計ソフトでは、入力された仕訳データは、この振替伝票のイメージで格納されます。
少なくとも、
  (1)日付
  (2)借方科目(勘定科目)
  (3)貸方科目(勘定科目)
  (4)金額(借方金額と貸方金額に分かれる場合もある)
  (5)摘要
の項目が必要です。

ここで、勘定科目の知識がなくても入力できるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。
一つは、あらかじめ勘定科目辞書や仕訳辞書のような機能を組み込んでおいて、オペレータがその場で調べながら入力できるようにすることです。
これは、簡単入力を売りにしている有名ソフトに多く採用されているようです。

しかし、事前にソフトに組み込まれたものだけで、全ての入力を行うのは難しいので、ソフトを使い始める前に辞書の設定が必要になってくるでしょう。
また、入力していて、設定されていない取引があった場合には困ってしまいます。
この時には、やはり勘定科目や仕訳の知識が要求されることになりそうです。

そこで、「IJssel会計」では、仕訳データに勘定科目を含まないことにしました。
勘定科目の代わりに、家計簿やお小遣い帳をつける時に自由に決めている項目をそのまま使うことにしたのです。
詳しくは、「IJssel会計」の説明のページをご覧下さい。

これは、言い換えると、仕訳データを入力するための勘定科目の設定も不要、入力の時も勘定科目は不要、つまり、勘定科目の知識は不要ということになります。

いかがですか?
「IJssel会計」が、簿記を知らなくても入力できる理由をご理解いただけたでしょうか。

私が知る限り、この設計思想を採用しているのは、今のところ「IJssel会計」だけです。
これは、私が、簿記の実務をよく知らなかったから生まれた発想かもしれません。
他の会計ソフトは、当然のことながら会計の専門家が開発に関わっていることでしょう。
開発者としては特許を申請したいくらいです(笑)。

しかし、「IJssel会計」も複式簿記のソフトですから、勘定科目の知識が全く不要というわけではありません。
申告直前の決算の時には、仕訳データの入力に使った項目がどの勘定科目に該当するかを関連付けてやる必要があります。
でも、これは一年に1回、決算の時だけでいいのです。わからなければ、この時だけわかる人に相談するという方法もあります。

一般の会計ソフトと「IJssel会計」の違いを図にすると、次のようになります。
image_008_2.gif
しかし、勘定科目の設定を決算の時だけすればよいというのは長所でもありますが、同時に欠点でもあります。
普通の会計ソフトは、先に勘定科目の設定をするので、仕訳データを入力すれば、すぐにその時点の財務諸表を見ることができますが、「IJssel会計」は、その設定を後回しにしているので、すぐには見ることができないのです。
これは、会計ソフトの目的を「税務申告ができればいい」ということにしているので、切り捨てた部分ではあります。

そもそも、私自身、領収書は溜め放題で、普段から入力をして財務諸表をチェックするなんてことはしてません。
申告時期が近づいてきて、慌てて1年分入力しているというのが実情です。
それに、勘定科目で分類した財務諸表は見られませんが、入力に使用した項目での集計はできますので、そのことで困ったことはありません。

さて、次回は「IJssel会計」のもう一つの特徴であるSOHO向けということについてお話したいと思います。

投稿者 IJssel : 2005年09月12日 10:00

コメント

貞子ちゃん様
「IJssel会計」をご紹介いただいたとの事、ありがとうございます。
ブログもさっそく拝見させていただきました。
そちらへもコメントさせていただきますね。

投稿者 IJssel : 2006年10月30日 15:43

はじめまして!
グーグルで検索して 飛んでまいりました。
http://diary.jp.aol.com/applet/uvsmfn2xc/20061030/archive
で こちらのブログ記事を紹介させていただきました。
宜しくお願いします。

投稿者 貞子ちゃん : 2006年10月30日 11:29

なんだ設定はやっぱりやるんですね。まあ、いいや。とにかくシンプル。

投稿者 Mie : 2006年06月04日 20:23

特許とってください。
「やXXの青色申告」以来、仕訳恐怖症です。何冊も(超初心者用の)本読んだり、会社の経理の捕まえたりして聞いてるのになー。多分自分の中で、仕訳を入力することが本当に合理的なのか疑いがあるのではと。ほんとうに、ほんとうに、勘定科目なしで平気ですね!?

投稿者 Mie : 2006年06月04日 20:22